敦の字
自分の名前を電話で説明するとき、
まぁ、苗字は簡単なのですが、
「敦」困るんですよ。
これが地味に説明しづらい。
まずチャレンジするのが
平敦盛の敦です。
まぁ、これは趣味ですね。
敦盛で伝わるとかなり嬉しい。
平家物語知ってるんですね、と一晩語り合いたい。
で次が山月記、中島敦
これも渋い。
味のある昭和純喫茶で深煎りのコーヒー飲む如き渋さ。
しかし、
この二人で通じないと、
そこからは苦しい闘いに、
敦賀のツルです。ツル?鶴?
中国の敦煌のトンです。トン?豚工?
仕方ないので分解して、
鍋蓋に口、子どもにノ文で、といっても
鍋蓋もノブンも割と伝わらない。
すると、ここらへんから負け戦で、
ほら、
少し昔のトレンディ女優で仙道敦子っていたじゃないですか(知るわけない)、
私:めちゃイケに出てた敦士わかりますか?
電話口:あーはい。ロンドンブーツの淳さんですね。
私:えーとそうじゃないんですが、せっかくなのでその淳から三水とって左に寄せて右がノブンで
電話口:取る?寄せる?のぶん?
など伝わらない。
電話口:もしかして渡部篤郎さんのアツですか。
私:それは危篤の篤です。重篤の篤です。
それでですね。
もう諦めるのです。
「AKBの前田敦子の敦です。」
「わかりました!(なぜそれを先に言わない、の黙声が付く)」
この敗北感は何なのか。
受話器を持つ腕が濡れたのは、夜露のためばかりではない。