電気応用琵琶(エレキ琵琶) 昭和38年 鶴田錦史
先生からお預かりした
昭和38年の電気応用琵琶の演奏
ノイズ処理もできるのですが、
琵琶の音も若干変わってきてしまうので、基本的にテープ音源のママです。
鶴田先生が昭和25年に琵琶用のコンタクトマイクを開発し(特許もとったとか)、
室内楽との協演で発表
クラリネット1名、
この曲の着目ポイントがいくつもあって、
1.琵琶楽における初の電気化の試みだ、ということ。
1921年電気三味線「咸絃」開発
1929年宮城道雄による「八十絃」
マイクロフォンで増幅する試み
これらは西洋のエレキギターとは別軸による
弦を絹糸のママ音量の増幅を図る試みなんです。
その系譜上にある琵琶版の電気化、としての価値
(しかし、いつだって新しいことにチャレンジするのは三味線界なんですよね)
その先に、
三味線かとうの「夢絃21」があり、
かねこ琴三絃楽器店による「ハイブリッド箏」に繋がってる、
という電気化の一里塚としての意味。
2.
次に、単純に「曲がよい」こと。
特に、邦楽人の作曲による洋楽編成の合奏の
秀曲だということ、
「ノヴェンバーステップス」と繋がっていくのですが、
鶴田先生の「電気応用琵琶による〜春の宴〜」は
従来の琵琶語りの形式を踏まえたうえでの作曲編曲なので、
まさに邦楽人でしかなし得ない形式の現代曲だ、
ということ。
3.エレキであることの必然性
エレキ化の試みは、
割と「とりあえずエレキ」とか
「なんちゃってエレキ」になりがちというか。
え
「エレキにしたかっただけなんじゃ」な試みもあるわけですよ。
エレキ化して古典弾いてたり、
それに何の意味があるのか。
しかし、この曲は
なるほど、この頭の中で鳴っている音楽を実現するためには
琵琶用のピエゾマイクの開発が必要だったとわかる。
バイオリン六挺やホルンなどの管の中で
琵琶の素音では全く音量バランスは成り立たないわけで。
武満徹はあくまでもクラシックの文脈の現代曲なので、
マイク使うことは発想外だったので。
(後の現代曲だと割とマイクのタブー感薄れましたが)
だからこそ、ノヴェンバーステップだと、
オーケストラが無音かとても小さいときに、
琵琶尺八が効果的に入る、という構成になる。
ただ、鶴田先生はあくまでも、
琵琶と共にバイオリンがハーモニックに鳴って欲しかったので、
やはりその音楽の実現のためには、
電気化しか解はない。
その行動力が凄まじい。
4.音量の割れ
ところどころ、
これは琵琶マイクの出力オーバーによる音割れか、
強い撥の叩く音に潰れた音がする。
(これは収録マイクの割れかもしれませんが、、、)
鶴田先生がこれを聞いて、残念に思ったのか、
それとも、残念に思わなかったか、
実はエレキ化は、素音を増大しているだけ、
のママではいつまでも「マイク」でしかないので、
エレキギターでは、
ジャッキー・ブレンストンが、
路上でアンプを壊してしまい、内部の振動板の代わりに丸めた新聞紙を詰め、
それがいい感じに歪んだことに始まり、
それからアンプを破って録音することが流行った、なんて言われてますが。(ディストーションの由来は諸説あり)
その工夫に似てる、と思いませんか。
ということで、
鶴田先生ほど新しい方なら
この潰れた音を、
「これぞ電気応用琵琶!」と
価値を見出していたのではないか、
というのは私が鶴田先生を理想化しすぎているのでしょうか笑。
ともあれ、
昭和38年の演奏音源がよもや残っているとは、
諸々ご許可頂いたので、歴史の資料として。