竹由来の代替象牙素材 サスティナブル・マテリアル展にいってきました。
ブログでも何度か取り上げている象牙レス琵琶
邦楽器は象牙と切っても切り離せない関係にあります。
三味線の撥や駒、筝爪・琴柱
琵琶ですと、薩摩琵琶の糸口、一の駒、三日月、覆寿
筑前琵琶の撥でしょうか。
しかし、その象牙はおそらく数年内に取引が禁止になると思われます。
象というと動物園には必ずいますし、
絵本の世界でも沢山目にする。
象が絶滅の危機に瀕しているといっても、日本には原生しないため遠い世界の話のような気がしていますが
マルミミゾウは近絶滅種(Critically Endangered)
サバンナゾウはその次の絶滅危惧種(Endangered)
近絶滅種(Critically Endangered)よりも絶滅危機レベルが高いのは、
野生絶滅 (EW)※だけ、これは佐渡のトキ保護センターのように
動物園や保護センターでのみ保護されており、野生種としては絶滅している状態ですね。
なので、野生絶滅の一つ手前の状況です。
これを食い止めねばならない。
それが象牙だということです。
象牙の国際取引は、1990年にワシントン条約によって原則禁止となりました。
日本でも、以降は条約締結以前に国内にある象牙の国内取引のみとなりました。
しかし、個体数現象は変わらず、むしろ加速する。
2016年8月31日付けでオンライン学術誌「PeerJ」で発表された研究によると、アフリカの18カ国では2007年から2014年までの間にサバンナゾウが30%減少した。
また、2013年3月4日付けで学術誌「PLOS ONE」に掲載された報告によると、マルミミゾウの個体数は10年に満たない間に62%も減少した。
国際取引が禁止されても、象牙の密漁は続きます。
「ワシントン条約締結前に保管されていた在庫の象牙だ」という名のもとに
取引がされるため、マーケットが存在する以上は密漁の動機が存続されるからです。
そこで、各国は国内取引も禁止にしていきますが、
2017年12月に、象牙の最大のマーケットであった中国が国内取引を禁止にします。
2018年1月から、中国ではワシントン条約締結前の在庫の象牙であっても、
商取引が禁止されることとなりました。
そこで、日本は世界に残された
象牙取引が合法である世界最大のマーケットとなってしまいました。
我々は、
象の絶滅を回避するうえでも、
国際的な視線に応えるうえでも、
近々国内取引も禁止になることが予想されることからも、
象牙に頼らない邦楽器
象牙レス琵琶を探っていこうと考えております。
さて、前置きが長くなりましたが、
象牙の代替素材を開発しているSera CreationさんからDMを頂きまして、
琵琶の部品の開発を検討したい、とのことで。
一昨日に幕張メッセのサスティナブル・マテリアル展に伺いました。
このような企業展、初めていったのですが、
やたら広い、他にも再生医療だとか、先端科学だとか面白そうな展示もあるのですが、
とりあえず中越パルプの展示の中にあるSera Creationさん
セルロースナノファイバーという竹由来の素材で邦楽器の部品を作っています。
筝爪がこちら
開発者の方が筝をお弾きになるとのことで、ご自身の筝爪のようです。
私も展示されている筝に当てて音を出してみたのですが(左右逆に展示されていましたが笑)。
全く違いがわかりませんでした。
このわかりませんというのは、象牙と新素材との弾きやすさに違いがない、という意味ではなく、
筝を弾いたことないので、「何もわからない」という意味です笑。
でも、質感も色も象牙そのままですね。
プラスチックだと汗を吸わずに滑る感じがしますが、それは無いです。
三味線と二胡の駒はこちら。
琵琶を出して説明。
琵琶の糸口の、この曲がっているブロックが全部象牙です。
三味線の撥や筝の爪と違って、「引っかくもの」ではなく、「乗るもの」です。
そういう意味では琴柱や、ギターのブリッジに近いと思います。
もちろん素材が違えば音の伝導率は違うのですが、
手にもって弦を引っかける
撥や爪に求められる精度までは必要ではない、と思います。言い方難しいですが。
そういう意味では、撥先に象牙を使用している筑前琵琶の奏者の方が、
精度の高い意見を伝えられると思います。
琵琶の場合は、これ、この円盤を買って加工することになります。
筝爪や撥は、完成部品を購入することになりますが、
琵琶の糸口は流派でも形や大きさが異なりますし、
同じ流派でも女性用・男性用でも大きく違います。
従って、特に開発は必要なく、
この円盤を琵琶店に持参して加工を依頼することになるだろうと思います。
こんな感じですね。
厚みが足りませんが、木で足せば問題ないと思います。
琴柱は、ボディに別部品として乗っかっているなので、素材が割と伝導率を変えてくるのですが、
琵琶の場合にはニカワで接着していますし、琵琶によっては糸口が細かったり薄いものもあるので、
ここの厚みで音が変わるようにも思えないんですよね。
変わるとしても、嫌な変わり方ではないといいますか。
むしろ重要なのがサワリ
ノミやヤスリをかけたときの感触、減り具合、
速く減るのは困りますし、削れないほど硬くても困る。
薩摩琵琶の糸口に求められる精度は、むしろココですね。
そういう意味では、筝爪や琴柱とは別の観点の難しさがあると思います。
こればかりは試してみないと何ともいえないので、
早速円盤を購入して、試してみようと思います。
いずれにせよ、
将来の演奏家・愛好家のためにも、象牙ではない素材を試して発信していければと考えています。
象と琵琶が継続できる理想郷を、
語呂合わせてゾートピア(象と琵琶)と呼んでいるのですが、勝手に笑
ゾートピアを目指して。