琵琶 双山敦郎 晴耕雨琵

琵琶プレーヤー双山敦郎のブログ

ウクライナのバンドゥーラ弾き~盲目の吟遊詩人と琵琶法師~ その1

ウクライナを、8000キロ離れた遥か東欧(西アジア)のことだと思わないために、
琵琶とウクライナを繋いで考えていきたいと思います。
 
ご存じ日本の琵琶は、
ペルシャのバルバット・オウドという楽器と祖を同じくしており、
シルクロードを通って日本にわたってきました。
 
バルバットは西欧に渡ってリュートとなり、
東にわたって、中国琵琶(ピパ)、朝鮮半島の琵琶(ビパ)、ベトナムの弾琵琶(ダンティエンパ)になりました。
 
バンドゥーラは、リュートとツィターを合体させたような楽器で、
フレットで弾く部分と、開放弦が張ってある部分があります。
ギターのようであり、ハープのような、斜めにする構え方も面白いです。
 
20世紀初頭までは、バンドゥーラ奏者は盲目の人が多く、
ドゥムカという叙事詩を歌いながら弾くようです。
平家物語を語る盲目の琵琶法師と似ていますね。
盲人の職業として音楽家が選ばれることは、ある意味では世界共通です。
 
ご紹介するのはウクライナの若きバンドゥーラ奏者
バレンティン=ライシェンコさん
白い現代風なバンドューラ
エレキバンドューラも開発したらしいです。
どこの分野でも新しいことに挑戦する人はいるようで。
スチール弦だから、そのままピックアップを付ければエレキになるのかな。
 
ウクライナ史をたどると、

今のウクライナの地は、

紀元前8世紀から、キンメリア人・スキタイ人、紀元前3世紀にはサルマティア人、

3世紀には東ゴート族、4世紀から5世紀にフン族

6世紀にアヴァール族が支配者となり、8世紀にはハザール・ハン国と様々な民族が入り乱れ、

 
9世紀にはキエフ・ルーシという国ができました。
キエフ大公国キリスト教に改宗したため、
東スラブ人のキリスト教国という、今のウクライナを構成する租はこの国にあります。
 
ただし、キエフ・ルーシ
キエフウクライナの首都ですし、ルーシはロシアの語源になっており、
ウクライナとロシア、ベラルーシの共通の祖である、と。
なので、ロシアの建国神話の土地(聖地)はほとんどがウクライナにあります。
ロシアがウクライナを「自分の地」として扱いたいという背景はここにもあります。
 
そのあとはモンゴル帝国の侵攻によって、キエフ・ルーシは消滅
その分家筋がモスクワに移行すると、
キエフ・ルーシはもっぱらロシアの祖であると捉えられるようになります。
 
中世から近世にかけては
様々な国の統治を受けつつ、
 

15世紀後半、ウクライナ地方では武装した人々が共同体「コサック」を作ります。

ポーランドリトアニアの臣下でありながら自治制を有する特殊な集団でした。

 

もっとも内乱を経てロシア・ポーランド戦争が起こり

1689年に永遠平和条約によって、ウクライナはロシアとポーランドで分割されます。

 

1863年には、ロシア下のウクライナは、

ウクライナ語の書物の出版や流通が禁止されるようになります。

ウクライナのロシア化政策の始まりです。

 
そのあと、僅かな独立時期と、
ロシア革命なども経てレーニン時代
束の間の、ロシアとウクライナの良好な関係の時代です。
 
共産党の支配を定着させるために1923年にウクライナ人の支持を取り付ける必要を感じ「ウクライナ化」政策が行われます。
ウクライナ共産党の幹部にはウクライナ人が登用されるようになり、ウクライナ語も推奨される。
政府職員でウクライナ語ができないものは履修して1年以内に習得しなければ解雇されることに。政府文書や刊行物はウクライナ語によることとされ、1922年には2割だったウクライナ語文書が1927年には7割になったという。
 
1年以内に習得しないと解雇というのは、なかなかに自分に置き換えると恐怖感ありますね。
1年以内にビジネス英会話を使えないとクビ、、、
 
この時期にウクライナ文化・文学が花開くことになりますし、
今のウクライナ人のアイデンティティの部分も、この時期のウクライナ語教育に拠るものも大きいとのこと。
ウクライナとロシアが良好な関係であった時期です。
 
その揺り返しがスターリン
レーニン1924年に亡くなると、権力を掌握するのがスターリン
農業集団化を図り、土地から農民を切り離して移住させます。
 
農作物を強制的に取り立てる、ということで
1933年に「穀倉地帯であるウクライナ」で飢饉が起きるという異常事態が起きます。
 
ウクライナから強制徴収された穀物はロシアの都市住民にまわされ、更に国外輸出もされていたので、意図的な飢饉であるとされています。
農民はパンは食べることはできず、ねずみや木の皮や葉を食べたとも、
 
これで300万から600万人が餓死したというから恐ろしい。
この「意図的な飢饉」によって独立の気勢があったウクライナ東部やクリミア半島ウクライナ人が多く死に、ロシア系住民が移り住んだと言われています。
 
報道でも「クリミアやウクライナ東部では親ロ派住民が多い」とする伝え方がされますが。
確かに、現在にそのような傾向はあるとしても、
スターリン政策までさかのぼって言及する必要があると思います。
 
そして、スターリン政策は、バンドゥーラやコブザの奏者にも及びます。
スターリン民族主義的なものを嫌い、
1930年頃、盲目の吟遊詩人であるコブザやバンドゥーラの奏者がハルキフの大会で集まったのですが、
そこから郊外の谷間に移動させられて、数百人が殺されたといいます。
ハルキフではコブザやバンドゥーラの奏者の石碑が建っています。
 
ロシアはウクライナを、ときに兄弟の国と言いつつ、
その民族性を否定したり、「属国」として扱ってきたということもわかります。
 
スターリンウクライナに対する行いと
プーチンのそれとは、重なるところも大きいと感じます。
 
今回のウクライナ侵攻で、同様のことが起きないことを祈りつつ。
バレンティン=ライシェンコさんの無事を。
 

狭義の「薩摩琵琶」と広義の「薩摩琵琶」

琵琶史については何度か取り上げておりますが、

薩摩盲僧から薩摩琵琶となった以降、

幕末明治大正昭和の分岐と呼称のお話を一つ。

 

きっかけはTwitterの中で

「薩摩琵琶と錦琵琶を間違えると激怒する方がいるので気をつけないと」というもの、

更に、それを間違えることは礼を失することなのだ、と。

 

一度は、スルーをしたのです。

が、やはり。そのツイートのコメントなどをみると

そのような狭量な琵琶人が存在し、又は一般的であるような印象を受け取られているようなので、

そこは訂正をしなければと考えたのです。

 

歴史を紐解くと、

まずは薩摩盲僧琵琶、

伝説的には島津日新斎忠良(1492-1568)が淵脇寿長院に命じて

薩摩琵琶歌を創始したとされておりますが、

 

薦田治子先生の研究により、盲僧琵琶は1674年の「官位院号袈裟廃止」

いわゆる三味線禁止令をきっかけに、柱を高くするなどの改良を行ったことが

楽器としての盲僧琵琶に繋がったとされております。

 

そのような盲人音楽が晴眼者に対して開放されたのは

おそらく18世紀中ごろか

橘南渓『西遊記』(1795年)には、

薩摩大隅には「平家琵琶などよりは小さ」い琵琶があり、

「年若き武士皆琵琶をもて遊ぶ」とされており、これが晴眼者の琵琶としての初出。

この段階で風習となっていたので、創始は遡れるでしょうが、

18世紀中頃に、武士や町民が琵琶を弾き歌う風習があったと推測されております。

 

さて、そのような薩摩琵琶は

薩摩藩士の中央進出に伴って東京に紹介されていきます。

近代化・国威発揚を目指す明治維新政府のもとで、享楽的な三味線音楽よりも

勇壮・剛健な琵琶歌がもてはやされるようになりました。

 

その琵琶ブームに火をつけたのは東京虎ノ門出身の永田錦心(1885-1927)

優雅で洗練された声楽的技法を取り入れ、楽器の改良をするなどして錦心流を打ち立て、

「帝国琵琶」というコンセプトを打ち出します。

 

この「帝国琵琶」という名称が、

薩摩琵琶を単なる郷土楽器から全国的な楽器に拡大することの大きな要因となりました。

東京出身の永田錦心の改革がなければ、

薩摩琵琶は薩摩竪琴や天吹と同じく地方楽器の地位であったろうと思われます。

 

この錦心流の独立をもって、それまでの薩摩琵琶は正派を名乗るようになります。

ある意味では、最も狭義の「薩摩琵琶」は薩摩正派を指す呼称といえます。

 

永田錦心は更に楽器の改良も考え、

勘所を増やすことの器楽的な改良、

女性奏者へ負担となっていた押し干奏法の軽減などを目的に

大正14年に五柱の錦琵琶を考案し、翌15年10月に発表します。

 

これを若き天才琵琶奏者である水藤錦穣に託して錦琵琶と名付けます。

永田錦心はそれから夭折したのですが、

水藤錦穣は更に四絃から五絃にするという改良も行っています。

それが四絃を切れにくくして、復絃による音響効果も多くなります。

 

この錦琵琶を開発したときに、

それまでの薩摩正派と錦心流の四柱の琵琶は狭義の薩摩琵琶となり、

五柱の新琵琶は錦琵琶として区別されるようになります。

 

もっとも、当時の琵琶新聞や雑誌『水聲』においても

薩摩琵琶の中の新琵琶、という捉え方で認識されておりましたので、

錦琵琶についても「広義の薩摩琵琶」に含まれていたと考えられます。

 

そのあと、水藤錦穣と錦心流の宗家争いが全国紙を飾り、

天才永田錦心が亡くなったことも相まって琵琶ブームが終息することになります。

この宗家争いが「狭義の薩摩琵琶」がセンシティブになる一つ目の要素があります。

 

そこから30年の戦後

国威発揚の一助となった琵琶はGHQの統制を受けて衰退をしていたところ、

鶴田錦史が新しい琵琶を打ち立てます。

五絃五柱の錦琵琶を基に、

腹板を薄くする、菊水型の駒を開発してオクターブピッチのズレを解消する

撥を薄くしてスリやハタキ奏法の開発など

「鶴宇琵琶」として発表します。

なお、オクターブピッチは、その後糸口に段差をつけることで解消されたため、

今では菊水型の駒を使うことは稀になりました。

以上の点から、外見から錦琵琶と鶴田流琵琶を見分けるのは難易度が高いです。

 

しかし、当時の琵琶界のフィクサーである水藤枝水が

新しい名称である「鶴宇琵琶」での集客が難しいと考えて、

「薩摩琵琶鶴田流」と称することを勧めます。

鶴田錦史は幼少期から17歳までは「薩摩琵琶錦心流」としてプロ活動をしており、

「薩摩琵琶」に愛着とアイデンティティをもっていたため、

「薩摩琵琶鶴田流」を名乗るようになります。

これには、正派や錦心流からの反発も少なくなかったのですが、

当時のフィクサーである水藤枝水と、実力者鶴田錦史の影響力の中で、次第に定着していきます。

(「狭義の薩摩琵琶」がセンシティブとなる要素の二つ目がここにあります。)

 

以上のように、薩摩琵琶には

最狭義は正派のみ、

狭義は正派と錦心流

広義では、正派・錦心流・錦琵琶・鶴田流

となっていきます。

 

この広義の「薩摩琵琶」は音楽史の中では一般的な用法であり、

日本伝統音楽講座『音楽』監修:小島美子

十七章『琵琶楽の流れ』薦田治子先生

においても、以下の挿図で説明がされております。

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琵琶分類

また、旧説の紹介であっても、

『日本琵琶楽体系』における田邉久雄先生の解説においても

錦琵琶は薩摩琵琶の項目の一つとして紹介されており、

「広義の薩摩琵琶」の中の流派であるという認識が示されております。

 

以上のとおり、単に「薩摩琵琶」としても

例えば薩摩盲僧琵琶から脱して晴眼者の琵琶となった趣旨の文脈なのか、

同じく近代琵琶の一つである筑前琵琶との対比の文脈なのか、

はたまた、錦心流が創設された際の従来派閥である正派を意味するのか、

若しくは、五柱の琵琶と対比するうえで四柱の琵琶という趣旨で指すのか、

広く日本音楽史の研究の中での「薩摩琵琶」の用法なのか。

 

以上のとおり

「薩摩琵琶」は時代と文脈と場面によってさまざまに射程が異なってくる用法となります。

 

以上を踏まえて、一番最初のツイートを検討致します。

すると、

これは「狭義の薩摩琵琶」の趣旨で、それと錦琵琶とを間違えることについてのものだと思われます。

 

しかし、「薩摩琵琶」という単語が上記のように場面・時代・文脈によって変化するもであるからこそ、

そのような複雑な用語の「間違い」について、琵琶に興味をもった方の素朴な指摘に

「激怒」することは、少なくとも一般的な態度ではありません。

 

万が一、本当に「激怒」するような方がいるのであれば、それは上記のとおり

琵琶史について、不勉強な方と言わざるを得ない。

 

いずれにしても、琵琶史や音楽史に限らずとも、

故意の間違いであれば格別、そうでない指摘に対して「激怒する」というのは、

いかなる学問においても、望ましい姿勢ではないことは明らかです。

 

そして、新規ファンを獲得していくことが課題の琵琶界においては

尚更にそれが妥当します。

 

ちなみに、以上のセンシティブな要素があるからこそ、

私自身としては「薩摩琵琶の錦琵琶」や「薩摩琵琶鶴田流」ではなく、

錦琵琶・鶴田流琵琶と呼ぶようにしていますが、

これは己に対するポリシーの話。

 

ビギナーがそれを言ったとしても、上記の用法があるからこそ間違いではありませんので、

それは、できるだけ琵琶の入り口を広めて、

琵琶を楽しんでもらうために、

ポジティブな言葉を選んでいきたいと考えております。

箏のコトと琴のコトと琵琶のコト

箏と琴とコト

NHK邦楽育成会の日本音楽学の中で、箏と琴の違いを習いまして。
どちらも床や台に置くツィター族の楽器ですが、
曰く、「箏」は開放弦を弾くもの。一絃一音のもの(チョーキングで音程変えたりはしますが)。

一番演奏者人口の多い、山田流や生田流の箏。箏曲部の箏です。

朝鮮半島だとカヤグムなど。


「琴」はフレットがあったり、ギターのスライドバーのような物を使って
一絃から何音も出るもの。
日本だとあまり馴染みはないのですが、
二弦琴とか、
中国だと古琴とか、朝鮮半島だとコムンゴなど。

 

なので、
その教えてもらった音楽学者の先生は
町の箏教室が、「お琴教室」とあると
電話して教えて差し上げてる。と。

 

さすが!!
と思ったのですが。

 

和琴(ワゴン)、雅楽で使う楽器です。
これ渡来した楽器ではなく日本にあった楽器。
源氏物語だと紫の上が弾いてて、
明石の君が琵琶弾いてて、明石女御が箏、
女三の宮が琴

 

家柄がよく正妻の三ノ宮が、当時格式の高かった琴を
知的で聡明な明石の君が琵琶(男性的なイメージもあるらしい)
和琴は理論が無いかわりに、心情を一番映し出すようですが
それが紫の上と、

 

多分それぞれの性格を知ると
「なるほどー」と面白いらしい。
ヴァイオリン弾いてる女性が気が強くて
オーボエ吹く男性が地味な、みたいな。

のだめカンタービレ」のキャラクター的な笑。

 

そんな和琴、
これ構造は箏なのですが、琴の字があてられている。

 

これは古くから琴の字で、
他にも新羅琴など、箏の構造のものも日本では「琴」の字が使われている。

 

これね、私は日本にきて琴の射程が曖昧になったのだろうと。
そもそも日本には大和言葉で「コト」という単語があり、
「箏のコト」「琴のコト」「琵琶のコト」と
広く弦楽器を指していた。

そして、コトを琴の字を当てた時に
琴が「箏のコト」と「琴のコト」を総称するようになったのでは、

と仮説を立てていたのです。

 

そもそも日本人は、呂音階が無くなったり
フレットが減ったりと、
理論的に深掘りしていったり
操作性を極める方向には興味はなかったのでは。

 

だからこそ、日本人にとって楽器の構造は重要な関心事ではなかった、と。

 

と思っていたら。
ツイッターで、雅楽をめっちゃ詳しい
おそらく学生さんが
朝鮮半島でも箏の構造に琴を使ってる例がありますし、
そもそも中国でも既に曖昧になっていたのでは」

と。


なるほど、私の仮説が崩れる。

そもそも「箏」と「琴」を厳密に使っていたのは
隋や唐の一時期、一部地域だけだったのかもしれない。

 

日本の文化論や日本語の射程に引き直す事柄ではない、

という。
ツイッターの巧用

M-1グランプリ2021 感想

M-1グランプリ2021

 

いやー、今年もよい大会でした。

敗者復活のアルコアンドピースまでは生で見れたのですが、
そこからは予定が連続したので
全ての情報をシャッタウトして録画。

 

フェイスブックツイッター
LINEも、Yahoo検索もせず
ひたすら外界を遮断して翌日を迎え、


さて見ようかと思ったのですが、薬局に薬取りに行ったらテレビで錦鯉おめでとう、になってしまい。

 

痛恨の結果を知る。

何があったんだ錦鯉って、、、。


さておき。

 

モグライダー
歌ネタが一発目、
2019年のニューヨークのように、
歌ネタの一発目は苦しいのですが、

 

フレーズを短くして、歌い出しても止めてツッコミしたりと
やりとりの手数ができたのに工夫が見えた。


あのリーゼントの芝さん。
両手をダラーンとする漫才師、最近じゃ珍しい。

カッコいい。

 

ランジャタイ
マイムがうまい。
ツッコミが「そもそもお前なにやってんだよ」と言わないのがオツで
きちんと設定の中のネコを突っ込んでるのが面白い。

 

マヂカルラブリーと比較すると
やはり村上さんの説明力と声の良さがわかる。

 

ユニバース
仕上がってたなぁ。
ユニバース優勝あるかと思ってたのだが。
2018年の宿泊ネタで「翼の折れたエンジェル」を30秒歌うとか、
下手だったらこその勢いが魅力でもあったので。
あの鮮烈を越えられたか、というと。

初見のインパクトを超えられるのかというのは永遠のテーマですね。

 

ハライチ
敗者復活はいつも、
天竺鼠なら決勝を掻き回してたんでは、とか
プラスマイナスに立たせたかった、とか思うのですが。


今年はハライチでよかった。
既にテレビスターのハライチでも勝てない、というのが
大会の質をあげてると思う。

 

人間、得意技って基本一個しかなくて
新しいものを見せようとすると、その得意技から外れる。


それがハライチでよくわかりますね。
岩井さんがキレるネタは新味はあったけど勝ち切れるネタではなかったか。

 

そういうと毎回切り口を変えて
その全部が一流だった和牛の凄みを知る。

和牛、今年がラストイヤーでここに居たら

全く違う大会になったんだろうな。

 

真空ジェシカ
奇抜な見た目と、せり上がりのカメラ睨みとかだったのに、
普通にしっかりした漫才でスカされたというか。
二進法の数え方と、お婆ちゃんのヘルプのハンドサインは笑ったなぁ

 

オズワルド
うまい。寿司ピッチングマシンや
マのセキュリティのネタのフォーマットを踏襲しつつ
クオリティを上げた、しゃべくり漫才
いよいよ関東初のしゃべくりのチャンピオンが出るかと思ったら。
アンタッチャブルはコント設定に入る)

逃した魚は大きいか、鯉だけに。

 

ロングコートダディ
「〇〇になりたいから練習してよい?」という
あり過ぎるコント設定かと思ったら、
それをフリにした天界の話でズラしてくれる。
二人とも演技うまいし、肉うどんの畳み掛けは笑った。
しかし、ワゴンRではなかったような。
ここの大喜利は確実に拍手笑い欲しかったところ。
なんでしょ、〇〇のー、と引っ張って、やはり肉うどんで良かったのでは。
ワルシャワの肉うどん、
稚内の肉うどん、

ワニの肉うどん、

 

まぁ、戯れ言ですが笑。

 

錦鯉
この芸風で二年連続出れたのがすごく、
トムブラウンも、メイプルも初見のインパクトに勝てない。
しかし、手を知られた中で勝ち上がってきたことの理由がよくわかる。
畳み掛けもして、この芸風なのに伏線回収していて
きちんと作り込んで勝ちに来てる。

 

錦鯉の優勝には
野田クリスタルさんの存在も大きくて
「どれだけバカになれるかじゃないっすかね」とコメントしたのが、
割と採点基準の軸になっていたように思う。


クレバーなオズワルドが煽りを喰らった格好になったか。

ツッコミが強いオズワルド対

ボケが強い錦鯉、

という構図でも面白い。

来年から寝っ転がらないと勝てないジンクスができたり笑。

 

インディアンス
コント設定に入るまでのやりとりが長い、というのが魅せ方。
ネタが飛んだ一昨年と、敗者復活の去年と

本領発揮が今年ですね。

ひたすら陽キャなので、家族で見られる。

 

もも

ミルクボーイの発明も彷彿させる
行ったりきたりする「〇〇顔」
芸歴浅くて勝ち抜いてくるコンビは
必ず何か武器を持ってますよね。

今年一番発明していたのは、ももかもしれない。

 

ファイナル
圧巻の錦鯉
2ネタ目に強いネタを残すのが優勝するパターンですね。
わかってても難しいのでしょうが。

 

振り返って一番再生してるのは
モグライダー

 

敗者復活入れたら、
ヨネダ2000ですかね。

 

あと痺れたのが
途中で入った、結果発表前の振り返り
番組の最初からのハイライトをBGMとテロップ入れて

これを放映中に編集してテロップ入れて
最後のネタから5分後に流してる、
この振り返りの20秒入れるためにどれだけの技術があるのか。
M-1は漫才師だけが作ってるのではない。

さて、反省会もみよ。

 

今年も最高の大会でした。

映画『ひまわりと子犬の七日間』リトルトゥース必見

『ひまわりと子犬の七日間』

 

8年前の堺雅人主演の、さほどヒットもしなかった邦画なのですが、

ラジオ好きには著名な映画で。

 

オードリー若林君の朴訥な演技と
アカデミー賞でのスピーチの大滑り、
事前にナイナイ岡村さんとスピーチの対策を考えたくだりや、

もっといえば岡村さんの謎スピーチの歴史も含めて

 

全部が最高に面白いのですが、
そういえば映画自体を観てなかったので観る。

 

保健所に勤める堺雅人
娘(十才ぐらい)に子犬の里親探しを手伝ってもらっていて
その娘さんはお父さんは里親探しの仕事をしてる、としかわかっておらず、
友達のお母さんから聞いて父親に反発する

そんな中で母子で保護された犬を
保護期間の七日間で人間への慣らしと里親探しに奔走させる話。

 

犬や猫の殺処分の話で、
最後は、まぁエンタメ映画の中でハッピーエンドにはなるのですが、
割といい映画だった。


若林君の演技は、東京から来たヤル気の無い若者で、
ハマっているとこもありつつ、

 

 

しかし、
里親探しを子どもに手伝ってもらうのは、
さすがに酷というか、
年齢や大人度にもよるんでしょうけど、自分が見つけられないときは死ですから、
それを抱えられる年齢まではやらない方がよいのでは。

この殺処分問題は、「解」はわかっていて
ペットショップの廃止
ブリーダーの免許制度
悪徳の「引き取り」業者の摘発

 

これだけ。やるだけ。


が、いろいろと利権が絡む。
ペットショップ業者が全員廃業するので。

 

しかし、イギリスでもドイツでも
ペットが欲しいときは保健所や保護施設に行って引き取るのが原則なので、

それが当たり前になれば、当たり前になるんでしょうか。

 

とニューヨークシティボーイを聴きながら考える。

竹由来の代替象牙素材 サスティナブル・マテリアル展にいってきました。

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サスティナブルマテリアル展

ブログでも何度か取り上げている象牙レス琵琶

 

邦楽器は象牙と切っても切り離せない関係にあります。

三味線の撥や駒、筝爪・琴柱

琵琶ですと、薩摩琵琶の糸口、一の駒、三日月、覆寿

筑前琵琶の撥でしょうか。

しかし、その象牙はおそらく数年内に取引が禁止になると思われます。

 

象というと動物園には必ずいますし、

絵本の世界でも沢山目にする。

象が絶滅の危機に瀕しているといっても、日本には原生しないため遠い世界の話のような気がしていますが

 

マルミミゾウは近絶滅種(Critically Endangered)

サバンナゾウはその次の絶滅危惧種(Endangered)

 

近絶滅種(Critically Endangered)よりも絶滅危機レベルが高いのは、

野生絶滅 (EW)※だけ、これは佐渡のトキ保護センターのように

動物園や保護センターでのみ保護されており、野生種としては絶滅している状態ですね。

 

なので、野生絶滅の一つ手前の状況です。

これを食い止めねばならない。

 

それが象牙だということです。

象牙の国際取引は、1990年にワシントン条約によって原則禁止となりました。

日本でも、以降は条約締結以前に国内にある象牙の国内取引のみとなりました。

 

しかし、個体数現象は変わらず、むしろ加速する。

2016年8月31日付けでオンライン学術誌「PeerJ」で発表された研究によると、アフリカの18カ国では2007年から2014年までの間にサバンナゾウが30%減少した。

また、2013年3月4日付けで学術誌「PLOS ONE」に掲載された報告によると、マルミミゾウの個体数は10年に満たない間に62%も減少した。

 

国際取引が禁止されても、象牙の密漁は続きます。

ワシントン条約締結前に保管されていた在庫の象牙だ」という名のもとに

取引がされるため、マーケットが存在する以上は密漁の動機が存続されるからです。

そこで、各国は国内取引も禁止にしていきますが、

2017年12月に、象牙の最大のマーケットであった中国が国内取引を禁止にします。

2018年1月から、中国ではワシントン条約締結前の在庫の象牙であっても、

商取引が禁止されることとなりました。

 

そこで、日本は世界に残された

象牙取引が合法である世界最大のマーケットとなってしまいました。

 

我々は、

象の絶滅を回避するうえでも、

国際的な視線に応えるうえでも、

近々国内取引も禁止になることが予想されることからも、

 

象牙に頼らない邦楽器

象牙レス琵琶を探っていこうと考えております。

 

さて、前置きが長くなりましたが、

象牙の代替素材を開発しているSera CreationさんからDMを頂きまして、

琵琶の部品の開発を検討したい、とのことで。

一昨日に幕張メッセのサスティナブル・マテリアル展に伺いました。

 

このような企業展、初めていったのですが、

やたら広い、他にも再生医療だとか、先端科学だとか面白そうな展示もあるのですが、

とりあえず中越パルプの展示の中にあるSera Creationさん

セルロースナノファイバーという竹由来の素材で邦楽器の部品を作っています。

 

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展示

 

筝爪がこちら

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筝爪

開発者の方が筝をお弾きになるとのことで、ご自身の筝爪のようです。


私も展示されている筝に当てて音を出してみたのですが(左右逆に展示されていましたが笑)。
全く違いがわかりませんでした。

このわかりませんというのは、象牙と新素材との弾きやすさに違いがない、という意味ではなく、

筝を弾いたことないので、「何もわからない」という意味です笑。

でも、質感も色も象牙そのままですね。

プラスチックだと汗を吸わずに滑る感じがしますが、それは無いです。

 

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三味線の駒

三味線と二胡の駒はこちら。

 

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琵琶の糸口

琵琶を出して説明。

琵琶の糸口の、この曲がっているブロックが全部象牙です。

三味線の撥や筝の爪と違って、「引っかくもの」ではなく、「乗るもの」です。

そういう意味では琴柱や、ギターのブリッジに近いと思います。

 

もちろん素材が違えば音の伝導率は違うのですが、

手にもって弦を引っかける

撥や爪に求められる精度までは必要ではない、と思います。言い方難しいですが。

 

そういう意味では、撥先に象牙を使用している筑前琵琶の奏者の方が、

精度の高い意見を伝えられると思います。

 

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成型体

琵琶の場合は、これ、この円盤を買って加工することになります。
筝爪や撥は、完成部品を購入することになりますが、

琵琶の糸口は流派でも形や大きさが異なりますし、

同じ流派でも女性用・男性用でも大きく違います。

 

従って、特に開発は必要なく、

この円盤を琵琶店に持参して加工を依頼することになるだろうと思います。

 

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糸口のイメージ

こんな感じですね。

厚みが足りませんが、木で足せば問題ないと思います。

琴柱は、ボディに別部品として乗っかっているなので、素材が割と伝導率を変えてくるのですが、

琵琶の場合にはニカワで接着していますし、琵琶によっては糸口が細かったり薄いものもあるので、

ここの厚みで音が変わるようにも思えないんですよね。

変わるとしても、嫌な変わり方ではないといいますか。

 

むしろ重要なのがサワリ

ノミやヤスリをかけたときの感触、減り具合、

速く減るのは困りますし、削れないほど硬くても困る。

薩摩琵琶の糸口に求められる精度は、むしろココですね。

そういう意味では、筝爪や琴柱とは別の観点の難しさがあると思います。

 

こればかりは試してみないと何ともいえないので、

早速円盤を購入して、試してみようと思います。

 

いずれにせよ、

将来の演奏家・愛好家のためにも、象牙ではない素材を試して発信していければと考えています。

象と琵琶が継続できる理想郷を、

語呂合わせてゾートピア(象と琵琶)と呼んでいるのですが、勝手に笑

 

ゾートピアを目指して。